こんにちは。これまで27年間生きてきて、パンプスを履くことがほとんどなかった女です。
世の中の多くの女性がヒールのある靴を履いています。もちろん最近はスニーカーでお洒落!みたいな特集が雑誌などでも組まれているので、スニーカーや運動靴の方も多いです。
しかし20代後半ともなってくると、大学生の頃と違って、少々畏まった場所へ行くこともどんどん増えてきます。高級なレストランに友達や彼氏とご飯を食べに行ったり、目上の方に会う際や婚約者の家族と会う時などなど…そんな時は、スニーカーや普段履きのぺたんこ靴だと、さすがに服に合わないので、ヒールのある靴、パンプスなどを履くことになります。
久々に履くハイヒールに、いつも私の足は早々に音を上げます。車での行き帰りならまだしも、電車だと絶望的な気分に。
そんな私とヒール靴とのとりとめもない話です。
ヒール靴との戦い
人生初、ヒールのある靴を履いたのは、大学生の時でした。
ワンピースにヒールのあるパンプス。女子大生バリバリの格好に憧れて、デパートにわくわくしながら向かったのを覚えています。
そして、気に入ったパンプスを早速試し履きをしてみました。かかとや親指の付け根辺りが微妙に当たることが気になって、店員さんに聞いてみると、
「大丈夫ですよ〜革は伸びるので、最初だけ少し当たりますが、すぐ足の形に合うように変わってきます!」
とのこと。
なるほど把握した。と、安易に納得してしまったのが運のツキ。靴のプロフェッショナルなのだから、その人が言うならそうなのだろうと純粋な私は信じてしまったわけです。
そして、地獄の一日が幕を開きます。
次の日、早速大学へ行こうとパンプスを履いてみると、歩いて数歩で違和感。駅までの数分の道のりで、すでに足のかかとが擦れ始めます。
出かけ際に母から言われた、
「まずは近所で慣らしてからのほうがいいわよ」
という言葉を痛感したのは、1時間電車を乗り継ぎ大学へ着いた頃でした。
学内では、授業中こっそり靴を半分抜いだりしてなんとか凌いだものの、かかとの擦れは一向によくはなりません。
午後には脱ぎかけた靴を履き直すのも辛くなってきます。仕方なく絆創膏を貼ってみますが、すぐ剥がれる。ゆるゆるになった足のかかとの皮は、短時間では戻りません。
もはやお洒落なパンプスどころか拷問器具です。
足が少しでも痛まないように気をつけるほど、歩き方もどんどん変な風になって、今度は他の場所まで痛くなってくるし、見た目を気にするどころではありません。
マジで痛いです。
しかも大学近くで新しい靴を買うわけにもいかず、家族に持ってきてもらうのも馬鹿らしいし、我慢するという選択肢以外ないのです。
ジンジンするかかとは、歩くたびに悪化するばかり。
這々の体で、自宅の最寄り駅に帰って来た頃には、泣く寸前というほどの痛みで、水膨れのようになったかかとの靴擦れは、もはや皮が破けて大変な惨状となっていました。
途中から気持ちだけで歩いてきたので、私の足はもう限界です。
そして、急ぎ母に電話し、いつものスニーカーを持って来てもらって、なんとか家に帰ることができたのでした。
かかとは既に靴擦れで腫れているので痛いままですが、スニーカーを履いた時の開放感たるや、半端ないものがあります。
急に足が呼吸できるようになったような心持ちです。
さて、家に帰ってからも痛みは止まらず、まだ足はジンジンします。
踵がとくにひどくて気になっていたものの、親指の付け根辺りも、真っ赤に腫れて、地味に痛いです。
靴下を履いても痛いぐらいだったので、その日は寝るまでずっとみじめな気分でした。
歴史は繰り返す
この一件を皮切りに、私がパンプスを諦めたという訳ではありません。
幾度も上記のやり取りを繰り返し、安い靴がいけないのかと思い、そこそこ値段のする靴を買って見たことも、コンフォートパンプスと呼ばれる歩きやすい痛くない!と銘打ったハイヒールを試したことも、何度もあります。
ミュールは早々に諦めました。あれはどう考えても無理です。
可愛いけど。
かかとが高い方がホールドされていいという情報を聞けば、
それを試し。
脱げにくいように、ゴムで足の真ん中あたりを止めればいいという情報を聞けば、
そちらを試す。
ヒールのために試してきた方法は多岐に渡りますが、どれも私を満足させるには至りませんでした。
たった1日しか履かれずに、靴棚の中で眠っているヒール靴のなんと多いことか。
こんなとこに閉じ込めておくなと怨嗟の声が聞こえてくるようですが、仕方ありません。
しかし、足が痛くなるレベルにも差があります。
靴擦れはするものの、レストランに食べに行くだけの用途であれば可能なパンプス。
デパートにちょこっと出かけるくらいの三時間ほどなら、保てるヒールのあるサンダル。
長時間歩くお出かけでもなければ、二足くらいはぎりぎり使えるヒール靴は出てきました。ぼろぼろになろうが、足が痛もうが多少が我慢して、それを使うしかないという辛さ。なんとかこの靴は死守しつつ、同じブランドで新しい靴を探して見ても、必ずしも足に合うとは限らない訳です。
幾度もぬか喜びさせられ、私を裏切り続けてきたヒール。
嫌いなのに気にしてしまう、私にとってハイヒールは、まさにその存在なのです。
ヒール靴と私
海外にそこそこ長く住んでいたこともあり、そこではいつもスニーカーか、中身もこもこのブーツで過ごしていました。なので、大学卒業後にパンプスを履くことはほぼありませんでした。
怠けた私の足はヒール靴のことをすっかり忘れ、日本に戻ってきてから、あの痛みにもう一度耐えようという強い気持ちは湧いてはきません。
ヒールを履かなくても問題ない職業であることも幸いし、極力パンプスなどは履かないようになりました。結婚式の二次会など、どうしようもない時は、靴を紙袋に入れて持っていき、会場前に履き替えます。
私の足は普通の人と形が違うのでは。
整形外科にでも行けばいいのだろうか。
と悩んだことも多々ありますが、わざわざ痛いことがわかっていて、合わない靴を無理に履くことはない。と吹っ切れることができました。
とはいえど、今でも靴売り場へ行けば、素敵なハイヒールやサンダルが目を奪います。
いつかはこの足にぴったりの運命の相手が現れるのだろうか。
そんな日を夢見て、今日もヒールのない靴を私は履くのです。